今回は知らなかったでは済まされなくなる,2018年2月1日(平成30年2月1日)から小型船舶の乗船者に着用が義務化されたライフジャケットについての記事です。
(これは昨年の船舶免許更新講習で貰ったパンフレットです)
目次
国土交通省が法令で着用を義務化
以前からニュースになっていましたので,ご存知の方もいるかと思いますが,国土交通省が関連する法令を改正したことで,いよいよ来月から小型船舶乗船者に対してライフジャケットの着用が義務化されます。
改正した法令は以下の3つです。
- 船舶職員及び小型船舶操縦者法(昭和26年法律第149号)
- 船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則(昭和26年運輸省令第91号)
- 船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則第137条の規定に係る取扱いの改正について(平成29年1月26日・国海安第271号・国海技第367号)
国土交通省のライフジャケット義務化に関するリンクを貼っておきますので,ご確認下さい。
http://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr6_000018.html
残念ながら遊漁船に乗るとごく一部ですが,ライフジャケットを着用していない方をお見かけします。
しっかりとした船長ならそうした場合には指導して頂けると思いますが,常連の方に対しては何も言わないこともありますので,まだご存知なかった方のためにここで紹介しようと思います。
小型船舶とは
まずは小型船舶について説明します。
小型船舶とは,総トン数20トン未満の船舶と一定条件を備えた総トン数20トン以上のスポーツまたはレクリェーションのみに用いられる長さ24メートル未満の船舶をいいます。
引用元:公益財団法人 海技資格協力センター「海技と知識 1ページ目」
つまり,多くのプレジャーボートや遊漁船は,小型船舶に該当します。
また,小型船舶を操縦するには,小型船舶操縦免許証が必要です。
小型船舶操縦免許証
小型船舶操縦免許証は,遊漁船の船長や,プレジャーボートを所有する方,レンタルボートを借りて船を操縦する方が必ず所有しており,船を運転する場合に必要とする免許証のことですね。
この小型船舶操縦免許証の制度は,国土交通省の「船舶職員及び小型船舶操縦者法」を根拠としています。
現在,小型船舶操縦免許証の区分には,一級小型船舶操縦士・二級小型船舶操縦士・特殊小型船舶操縦士免許に分かれています。
さらに,旅客船や遊漁船の船長になりたい場合は,「小型旅客安全講習」を受講し,特定操縦免許を取得する必要があります。
そうした免許証を持つ船長には,小型船舶の安全確保をするための基本的責務について「小型船舶操縦者の尊守事項」として法令化されております。
小型船舶操縦者の尊守事項
船長には以下の遵守事項が法的に定められています。
- 酒酔い等操縦の禁止
- 発航前の検査の実施
- 救命胴衣などの着用
- 免許者の自己操縦
- 適切な見張りの実施
- 危険操縦の禁止
- 事故時の対応
それぞれ違反が発覚した場合,違反点数が課せられます。
尊守事項を見てのとおり,以前から船長自身が救命胴衣などの着用をすることが定められており,違反した場合には違反点数2点が課せらていました。
ただし,救命胴衣を着用しなければならない条件は限られた場面でしか義務化はされておらず,また船長以外の乗船者には着用を義務化しておらず,努力義務で済まされていました。
ライフジャケット着用義務化の中身
さて,前置きが長くなってしまいましたが,国土交通省は船長以外の乗船者にライフジャケットの着用を義務化させることが,今回の法令改正に至った経緯と目的です。
ただし,一般の釣り人が「船舶職員及び小型船舶操縦者法」を知っているわけありませんよね。
いくら義務化されたとはいえ,小型船舶操縦免許証を持っていない人が国土交通省が定めた法令を遵守する根拠はありません。
したがって,義務を命じられるのは,あくまでも小型船舶操縦免許証を所有している遊漁船やプレジャーボートの船長であり,船長がすべての乗船者にライフジャケットを着用させる義務が生じます。
もし着用させなかった場合は船長が違反を受けてしまい,違反点数2点が課され,再教育講習を受講しなくてはいけません。
再教育講習を受講すると,違反点数2点はなくなります。
ちなみに,違反点数が5点以上になると,1ヶ月から最大で6ヶ月の業務停止命令を受けてしまいます。
業務停止命令を受けた船長は遊漁船を営むことが出来なくなりますので,乗船者の方は必ず船長の命令には従って下さい。
もちろんプレジャーボートの乗船者も船長の指示は絶対ですので,必ずライフジャケットを着用して下さいね。
また,2018年2月1日(平成30年2月1日)から義務化されると説明しましたが,周知期間を4年間設けており,実際に違反点数が付与され始めるのは,4年後の2022年2月1日からです。(その頃には元号が変わっているはずですのであえて西暦表記にしています)
違反点数が付与され始めるのは4年後ですが,海上保安庁の警備で違反が指摘されると厄介ですので,すぐにでもライフジャケットの着用を実施して下さいね。
ライフジャケットは国土交通省の安全基準を満たしたもの
今でも既にライフジャケットを着用しているから関係ないなと思った方もいると思いますが,ちょっと待って下さい。(通販番組みたいですね?笑)
今着用しているライフジャケットは安全基準を満たしていますか?
国土交通省によると,国の安全基準に適合したライフジャケットを着用する必要があるようです。
国土交通省が試験を行い,安全基準への適合を確認したライフジャケットには, 桜マーク(型式承認試験及び検定への合格の印)があります。
その桜マークをもとに海上保安庁は検査を行いますので注意して下さい。
国土交通省へよくある問合せは以下のとおりです。
Q1, 小型船舶に乗船する場合には、安全基準に適合したライフジャケット(桜マークあり)を着用しなければ違反になるのか?
A1, 平成30年2月1日から、原則、小型船舶の船室外に乗船するすべての者に国の安全基準に適合したライフジャケット(桜マークあり)を着用させることが、船長の義務になります。
したがって、同日以降の小型船舶乗船時に国の安全基準に適合したライフジャケット(桜マークあり)を着用させていない場合には、船長の違反となります。ただし、違反点数の付与は、平成34年2月1日まで行われません。Q2, 船舶検査を受けた小型船舶に備え付けられているライフジャケット(桜マークあり)ではなく、持ち込みのライフジャケット(桜マークなし)を着用した場合、違反となるのか?
A2, 違反になります。桜マークのないライフジャケットでは、国の安全基準に適合しているものかどうかを判断することができません。
注)桜マークのないライフジャケットであっても、努力義務や適用除外の場合のほか、小型船舶操縦士免許を必要としないミニボートやカヌー等の手漕ぎ船に乗船している場合は違反になりません。
つまり,これまで使用していたライフジャケットに桜マークがない場合,平成30年2月1日以降に着用していればそれは法令違反になるということです。
船長の責任になりますので,絶対に新しいライフジャケットを購入してください。
安全基準を満たした(桜マークあり)ライフジャケットの紹介
以上のことから,国土交通省が試験を行い,安全基準への適合を確認したライフジャケット(桜マークあり)を着用しなくては,平成30年2月1日以降は法令違反になることが分かって頂けたと思います。
残念ながら,釣具屋で販売されているライフジャケットの大半は桜マークがついていないものが今でも販売されており,自分自身で知識を身に着けて購入しなければ,法令違反のライフジャケットを購入してしまう恐れがあります。
また,釣具屋の店員さんも万能ではなく,法令の知識が不足している方がいてもおかしくありませんので,あまり信用しすぎるのはよくありません。
特に国際基準を遵守していると言われるCE認証,CEマークですが,今回の法改正に伴い遊漁船用のライフジャケットとしては意味のないマークとなりますので注意して下さい。
国の安全基準を大きく超えている製品であっても,桜マークがない製品は違反とみなされます。
一般的にCEマーク付きのライフジャケットの方が,桜マーク付きのライフジャケットよりも安価に購入することが出来ますし,デザインもCEマーク付きの方が良く見えるかもしれません。
正しい知識を覚えて,安全基準を満たした(桜マークあり)ライフジャケットを購入しましょう。
なお,安全基準を満たした(桜マークあり)ライフジャケットは,それぞれのメーカーで発売されていますので,一部の製品を紹介します。
シマノのライフジャケット
ラフトエアジャケット(膨脹式救命具) VF-051K
ラフトエアジャケット(ウエストタイプ・膨脹式救命具) VF-052K
シマノの膨張式ライフジャケットですね。
落水した際に,自動で膨張してくれるタイプです。
デザインが良いため,オシャレなレインウェアを着ている人にはオススメです。
VF-051Kは2018年3月に3種類のカラーが追加されるようですね。
シマノから販売されている,これ以外のライフジャケットは磯やサーフ用として販売されており,小型船舶の乗船用ではありませんので,間違えて購入しないようにしましょう。
商品名をよくみると,シマノのライフジャケットはラフトエアジャケットという名称です。
それ以外はゲームベスト・フローティングベスト・サーフトリッパーベストという名称で販売されていますので,ライフジャケットではないことが分かります。
ダイワのライフジャケット
DF-2007 ウォッシャブルライフジャケット(肩掛けタイプ手動・自動膨脹式)
DF-2207 ウォッシャブルライフジャケット(ウエストタイプ手動・自動膨脹式)
ダイワの膨張式ライフジャケットですね。
シマノとほとんどデザインが変わりませんがカラーは若干少なめです。
気に入った方のブランド名で購入しても良いでしょう。
ダイワから販売されているライフジャケットも,自動膨張式以外は桜マークがついたものがありませんので,注意して下さい。
商品名をよくみると,ダイワはライフジャケットと記載されています。
それ以外はゲームベスト・フローティングベスト・フロートという名称ですので,ライフジャケットではないことが分かります。
がまかつのライフジャケット
エアベスト GM-2177
エアフローター GM-2176
がまかつの膨張式ライフジャケットですね。
シマノ・ダイワと比べるとカラーの選択肢がなく黒色だけですので,デザインとしてはかなり落ち着いた部類に入ります。
がまかつがとても気に入っているブランドということでしたら購入しても良いでしょう。
かまかつから販売されているライフジャケットも,自動膨張式以外は桜マークがついたものがありませんので,注意して下さい。
商品名をよくみると,がまかつのライフジャケットはエアベスト・エアフローターというように「エア」という名称が入っています。
それ以外はフローティングベスト・ウィンドストッパーという名称で販売されていますので,ライフジャケットではないことが分かります。
まとめ
- 2018年2月1日から小型船舶の乗船者にライフジャケットの着用が義務化される
- 違反の罰則は船舶免許所有者の船長が受ける
- 違反点数の付与は4年後から開始
- ライフジャケットは安全基準を満たした(桜マークあり)ものに限る
- 現在主要な釣具メーカーが販売しているライフジャケットは自動膨張式のみ
ライフジャケットの着用義務化についてご理解頂けたでしょうか?
各釣具メーカーから売り出されているものは,磯釣り用や堤防釣り用に開発されたフローティングベストという製品が多く,今でも新製品が開発されています。
国土交通省が義務化した小型船舶用のライフジャケットは桜マークがついたライフジャケットのことです。
釣具屋へ行けば,シマノ・ダイワ・がまかつ以外のメーカーから販売されている桜マーク付きのライフジャケットを見つけることは出来ると思いますが,
上記3メーカーから販売されている桜マーク付きのライフジャケットは自動膨張式のみですので,釣具屋で購入する場合は注意して下さい。
迷った場合は,上で紹介した3メーカーのライフジャケット6種類から選ぶと良いでしょう。
義務化はされますが,周知期間が4年間ありますので,今すぐに購入しなくても罰則はありません。
ただし,海上保安庁から指摘は受けますし,命を守る大切な道具ですので必ず購入するようにしましょう。
また,せっかく高いお金をかけてライフジャケット購入した方でも乗船中は暑くて邪魔だという理由で釣りの最中に外してしまう方がおられます。
いつ,どこで海難事故が起きるか分かりませんので,常に装着することを意識しましょう。
私の記事が皆さんの参考にして頂ければ幸いです。
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